細野晴臣&東京シャイネス @京都大学西部講堂 〜報告〜    2/4

                2006年 1月28日(土)

福岡から行って来ました。JRにて14:00ごろ京都入り。とちゅう道に迷ったりそれから迷子になったりいろいろあってやっと宿に着いてハッと見るともう開場1時間前です。(昨夜はどういうわけか色んな用事が入って結局一睡もできなくて)ボ〜っとなったままなんだけど・・・ともかく会場へ急ぎます。

[会場到着] 18:30ごろ
京大西部講堂に到着。 ・・で、うわ〜、目が覚めました(笑)。 西部講堂ですよ。独特な雰囲気です。わざわざでも演奏を観に行きたくなる会場って、まさにこんな所かもしれません。どっちかというと私は、交通の便のいい街中の音響設備ばっちりの会場より、こんなとこの方がどきどきしてきますよ。
さて、辺りはすっかり真っ暗で、敷地内に焚かれた焚火の回りにライブに来た人たちが集まってたり、テントの下で甘酒がふるまわれたりしていて和やかな雰囲気です。
受付の方へ急いでいると目の前でばったり聞き覚えのある声。浜口茂外也さんはじめシャイネスのメンバー数名だったのかも(ものすごく慌ててた私はもしかしたら間違った所から入ってしまってたのかな)。 広場の傍らで、ふつうに甘酒(?)を片手に会場前の焚き火に集まる人々を眺めながら「この雰囲気いいよねぇ・・」と談笑されています。そうですよねぇ。確かにここで焚き火を囲んで演奏していただけるのもステキだなぁと思いました。他にはない独特な雰囲気ですねぇ。でももし本当にシャイネスのみなさんだったのなら、ず〜いぶんリラックスされてましたよぉ。(笑)これはいい。
で、受付へ急いだんだけど、目的のパンフレットは既に完売。しょんぼり・・。ほしかったよぉ・・。 ところで受付も販売も、京大生たち(なのかな?)が一生懸命やってくれてて、いきなりいい雰囲気です。
建物の講堂に入ると、既にほとんどの人が自分の位置を決めて立っています。立ち見だけど詰め込んだような感じは全然なくて、みんな笑顔でゆったりと和やかな雰囲気。10〜20代前半くらいの人が意外にも圧倒的に多いような。
天井の梁を見上げるとたいへん高くて独特の雰囲気。そして暖房なしなんだけど私が入った時には思ったほど寒くは感じませんでした。
そういえば開演前の音楽がかかってなくて、いいですね。 あちこちで、隣同士で細野さんへの思い入れを語りあってる20〜30代くらいの男の人たち、「コレいい曲よネ〜」とHISの歌を口ずさんで教えっこしている女の子の二人連れ、一人でパンフレットとずぅっとにらめっこしている人(そ、そんなに面白いんですか?)、まもなく開演と聞いて「きゃぁ・・」と慌ててる女の子(笑)、…みんな細野さんが好きで、ピースフルで、ほんわかした空気に包まれてます。


[開演]19:00ごろオープニングアクトKAMA AINA
ほぼ定刻に開演。 KAMA AINA青柳拓次さん)。マックが置いてある以外、残念ながら私の位置からは楽器が見えなかったけれど、とてもネイティブな感じの音楽や、ちょっとジャズっぽい感じの(?)都会的な曲など、どの曲もとても面白い世界でした。もっと聴いていたいなと思っていたら、30分もしないくらい(?)で切り上げ、熱い拍手に見送られてあっさりとステージを後にされました。(会場・「えぇ〜っ」)


細野晴臣&東京シャイネス
東京シャイネス登場。ステージ左から高田漣(pedal steel)、浜口茂外也(dr)、伊賀航(ac-b)、三上敏視(acc. el-g)、鈴木惣一朗(mandolin)、高野寛(g. cho)。 
ひときわ大きい拍手と共にステージ右から細野さんが登場。(わ〜どうしよう!本物ですよ)
登場するなり「カウントダウン・ライブへようこそ・・」と言って会場から笑いが起こる。少しお声が低めなのかな?「今日は旧暦のお正月」という補足に、会場から「おおぉ〜〜!」と。すごく反応がいい会場です(笑)。さすが関西です。
 「(地元)MK新聞(?)」の話しに、京都の人から笑いが起こる。「夢の話」「お化けの話」をしかけて「この話の続きは後で」(会場・笑)。

01 「ろっかばいまいべいびい」
ああ、ステキな声です! さっそく一番好きな曲のひとつです。緊張した感じはなくて、余裕のあるいい演奏ですよ。
02 暗闇坂むささび変化」
03 「僕は一寸」
ほとんど一曲ごとに細野さん、たくさんお話をしてくださいます。
04 「LOTUS LOVE」
ちまちまとした詩(うた)は嫌い。」「大きなことを歌うのが好き。「世界」とか。世界、それはワールド!とかね」と言ってこの曲へ。 *(この話をされたのは別の時だったようです)
イントロに入った瞬間に、その世界へ引き込まれてしまう。自分が今どこにいるのか一瞬わからなくなるような感じがするほどでしたよ。どこかサイケな(ちがうかな?)香りが漂う感じのするこのイントロの魔法にかかったような感じです。歌詞もいつもとは違う意味に聞こえてきて、ひとことひとことが深く胸の奥に届く。時空が変化してステージ上との距離がなくなってしまうかのような感じ。
実は、細野さんの曲の中には、後追いファンの私にはどんなに頑張っても距離を縮められない、その時代を細野さんとリアルタイムで共有した人との間でだけに密接に結びついた特別の空気を持った曲なのだなぁということが時間とともにわかってくる曲というのがあって(長くてすみません)、とりわけライブ会場ではたびたびそれを思い知らされてしまうんです。
でもこの「LOTUS LOVE」は、曲想の世界の方がそんなことより遥かにずうっと大きくて、私なんかでも何の心配もなく最初っからスッとその世界に入れてもらえる感じがして、もともと大好きな曲のひとつなんですが。それにしてもこの日の演奏は特別な感じがしました。私の勝手な思い入れのせいかな。
05 「恋は桃色」
ステキなお声です。
06 モーガン ブギ」 新曲
「新曲を演ります」と紹介して…。すんごくカッコイイ! この曲大好きです、細野さん! ノリノリで思わず会場みんな踊りまくってます。 NHKのアニメ「南の島の小さな飛行機バーディー」に出てくるモーガンじいさん(?)のための曲だそうですよ。
07 「Pom Pom 蒸気」
この曲の時だったと思います(違ったらごめんなさい)、イントロに入った瞬間、高田漣さんが、「この曲好きだ〜〜!」って感じで(私も大好きです〜〜!)、まるでひとりのただの細野ファンみたいにウレシソ〜な顔で、ご本人の横で演奏されてました。もちろん会場ノリノリです!
08 「Hi-Heel Sneakers」
京都では、完成版でした。すごくカッコイイです。細野さんの歌が渋くて、ブルースにも合うんですね。東京の「公開リハーサル」版と、両日体験できた方がうらやましいです。個人的には東京版も、ぜひ見てみたかったなぁ。
09 「香港ブルース」 〜メンバー紹介〜
東京の九段会館に続く「公開リハーサル」。細野さんがその場で譜面を配り、各メンバーに一言ずつアドバイスをしていく。ベースは何も指示が書いてなくて、伊賀さん苦笑い。「ポイントはね、弾けないとこは弾かないこと。そうすればうまくいくから」
作者のホーギー・カーマイケルについて、「最初のシンガーソングライターですね」など、紹介して演奏へ。この東京シャイネスは、確かベースの伊賀さん以外は専門の楽器ではないバンドだったと思うんですが、即興で演奏しているところを見てると、音楽をよく分かった人たちばかりなんだなぁ!ということが、ちょっとした瞬間に逆にすご〜くよくわかったりするような気がしました。時々譜面とにらめっこしたり苦笑いしたりしながら演奏するシャイネスのみなさんの楽しそうな表情、こんな光景を見せていただけ、演奏者と聴いている私達との関係をシンプルにしていただけた感じがして、とっても楽しかったです。
細野さんが、その瞬間に「これだ!」って思うものを演っていただけると、その良さがこちらに伝わるように思いますよ。
10 Chattanooga Choo Choo」
大好きな曲です。歌詞が一部京都バージョンでした。「湯豆腐」が出てきたかな? もちろん会場大うけ。細野さん、とってもサービス満点です。
11 「夏なんです」
12 終わりの季節
13 「はらいそ」
「これはあの世とこの世の境目の音楽」。「東京のお台場という所で」うかんだ曲です(だったかな?)、と紹介。細野さんご自身にとっても思い入れの深い曲なんですね。
この曲は、曲全体に、その時の空気と細野さんの思いがほんとうに広がっているんですね。お台場へは行ったことのない私でさえ、聴けばすぐにその空気に入ってしまえる気になってしまうほどです。 まして細野さんには、歌う度にその時の情景がはっきりと広がっているはずで、どのような思いなのか。。 私なんかには計り知ることはできないんですけどね・・。 そしてすばらしい演奏。
〜なんですけど・・ああぁ、やっぱり立ち上がっちゃう。そしてステージ右袖に隠れていってしまう。私は思わず目を伏せてしまう。ダメダメな私(笑)。みんな拍手で呼び戻しています。

(ここは個人的な余談なので、とばし読みしてください)
<余談>アンコールもそうなんですが、ステージ袖に消えたり戻ってきたりということが、あの世とこの世の境を行き来しているように感じてしまっている自分に気付いて動揺。(ダメダメじゃん)
実は、この会場に入った時から私はこのものすごく高い天井の梁が気になって、建物の独特な雰囲気や、ステージ、ステージ裏、照明といった舞台設定もあって、私はどこかで「あの世とこの世」ということがずぅっと頭によぎってました。
それで細野さんが袖に隠れたり再び姿を現したりする度に、思わず目を伏せてしまう。アンコールをする会場、そして呼ばれる度にちゃんとまた姿を現してくれるステージ上にクラクラしてしまう(笑)。(ダ〜メですね)
コレは実はね(またかい)私が高校生の時、大好きだったミュージシャンが急死したんですね。それは長いブランクの後の久々の活動開始で、私の地元も含めた世界ツアーの話も出ていて、それが私の初ライブになるはずだった〜その矢先のことだったんです。それで何もかも終わったという感じ。大げさに聞こえると思いますが。私にとって当時、その人物がそれほど心の支えだったんですよ。ブレイクしていたYMOの細野さんに注目していながら、ダメでした。この急死のショックが大きくて、細野さんの音楽を聴くようになるのがこんなに遅れたり、その間ポピュラーミュージックを全く聴かなくなってしまったりしたんです。随分こまったさんですねぇ?(笑)。

アンコール
01 「風をあつめて」
ゲストに高遠彩子さん、高音を歌ってくれます。私のところからはお姿が見えなくて、残念。 細野さん、九段会館に続いて、やっぱりまちがっちゃうんだけど(笑)「ごめんね〜」ととってもオチャメに流して、私たちはむしろ大喜び。こんなのが見れるのもライブの楽しさの一つなんですよね。

02 「幸せハッピー」
この曲のために来津茂理さんを呼んで。太鼓が入って、音頭でまたノリノリです。この曲の時は、会場は曲を知ってる人とそうでない人に分かれたような感じがチョトだけあったかな?

アンコール(2)
01 「Stella」
アコースティックの「ステラ」です。 「今日はどんとの命日です」との細野さんの言葉に、会場は「おおぉ〜!」。京都にゆかりのどんとさんとの思い出や、どんとさんとこの西部講堂の話なども。「この曲は(今日は)どんとに捧げます」。「今この会場に来てるでしょう」と言って、曲が終わると天井を見上げて手を振られました。私はあまり多くは知らないのですが、細野さんにとっても多くの人にとっても、とても大切な人だったことが伝わってきました。

                    〜〜〜

最後に、細野さんが話されたことで、印象に残ったことを書留めてみます。

中盤で「今までやったような(ブギーなど?)は、僕にとっては「あの世」の音楽なんです。」「でも、これからの音楽をやっていかないといけない」(というような話をされたと思うんですが、かなり記憶があいまいです)

今日は加藤清先生(京都大学)が来られているとのお話し。「ボクの、唯一の先生かな・・」。細野さんにとって、とても大切な方なんですね。
私はこの会場に入った時から、このものすごく高い天井の梁が気になって、建物の独特な雰囲気や、ステージ、ステージ裏、照明といった舞台設定もあって、私はどこかで「あの世とこの世」ということがずぅっと頭によぎってしかたがなかったのですが、この話を聞いて、不思議な安堵感を得ました。


細野さんが今朝(?)見た夢…演奏してた次の瞬間ベッドの上で寝ている自分へ…「ステージには体だけが来ている」というお話。

(ここもとばして読んでください)
<余談>このお話も、トーク中は楽しかったのですが、後で考えてみると、「やっぱりこんなにも緊張されるものなのかなぁ」と気になってきてしまいました。私の勝手なとり方のせいなのでしょうけどね。(ラジオを聴いていても、細野さんのお話は、いつもこんな調子みたいで、私なんかにはどっちにしても真意をつかむことなんかできないんですけどね)
細野さんの心が、その時ステージ上の細野さんの体の所にいるかどうかというのは、誰にも、細野さん自身にも制御できないことなのかもしれないんですねぇ。ライブってそういえばヘンなもので、ライブという形で場所と時刻を設定すれば、細野さんの身体はステージ上に確実に呼ぶことができてしまうんだけど。
細野さんの心がここにあって、そのときそこへ私たちがたまたま居合わせる、というのが順序としては自然なのかな。それに、その場から心が離れていったら、そのときがお開き、というのが本来の自然なあり方なのかもしれないですね・・ 
細野さんくらいになったら、これから、つまらないお約束ごとのようなものはどんどん破っていかれてもいいのではないかと、私はちょっと思ってしまったのですが・・。 みなさまはどのように感じていらっしゃいますか?


どの流れで話されたのか思い出せないのですが、高田渡さんとの京都での思い出の話を聞かせていただけたのもうれしかったです。70年代のころ?高田渡さん行きつけのイノダコーヒー店などに連れて行ってもらったことなど。横で聞いている、ご子息の高田漣さんに、「その時はまだいなかったの?」なんて尋ねる場面も微笑ましかったです。(以前から京都に行ったら必ず行こうと思っていたこのイノダコーヒー店本店。翌日行くことができました)
1月にお孫さんと温泉に行かれた時のお話も。旅館の仲居さんに「坂本龍一さんと一緒のバンドにいらしたかたですね」、そしてたんぜんをはおって、無精髭で、お孫さんと一緒だった細野さんは「引退なさったのですね」と言われて(笑)、「逆らわなかった〜」。なぜなら「(隠居した)その状態を望んでるから。」と話されてましたよ。

[エピローグ] 21:30ころ
会場を出ると、建物の前では会場から出てきた人たちが、甘酒をもらって三々五々焚き火を囲んで楽しそうに談笑しながら余韻に浸ってますよ。いいですねぇ。でも私は、昨夜寝てなかった疲れがここでどっと出てきて、万が一にもこんな寝不足な顔をばったり細野さんに見られでもしたら一大事だわ!(笑)と思って一目散に会場を出る。
表に出てみるとなんとなく乗り物に乗る気分ではなく、余韻に浸りながらずぅっと歩く。極上の時間。大学前の整然としたきれいな大通り。歩いているうちに段々しあわせに、ふわふわな気持ちになってくる。こうして落ち着いてくると、そういえばこのまま宿に着いてしまうのももったいない気がしてきて、通りかかったコーヒー店の2Fで一休み。あまりにも寒かったしね。あったかいコーヒーでほっとする。いろんな思いがこみ上げてくる。来てホントによかったなぁ。いいライブだったなぁ。あれは本当に細野さんだったのかなぁ。細野さんはつらかったのかなぁ。
宿に戻って、PCでとりあえずここに速報を書き込む。ホッとする。寝る。

                    ☆彡
細野さん、本当にありがとうございました。 近いうちにまた、私たちの前で歌ってくださいますか?         2006 2/4(土)14:20 

                             (↑翌日の西部講堂