m-poko2006-04-25

美人寿司の夜(湯山玲子プロデュース) @代官山UNIT
vol.1  「夜のピアノ」
  (コシミハルバレリーナ〜 蓄音機)

                    
コシミハルさんの ピアノ 〜 踊り〜 蓄音機
3つも私の気を強力に引くものが揃ったイベント。 しかもシェルマンの方が来て蓄音機の音を聴かせてもらえるような機会はこれを逃したら私には二度とないかもしれないと思い、行ってきました。

当日券を買って店内へ・・どうやらほとんどが招待客のようなんですが、すみっこにこっそり隠れて観てればいいやと中へ。

コシミハル with ピアノ & バレリーナ
遅れて入ったため、ほどなくステージが始まりました。バレリーナ2人とミハルさん。60cm(?)くらいの段差しかない、立見の客ととても近いステージなのですが、あっという間に小さなステージが不思議な空間に。そして表現されてる踊りがホントにキュートでセクシーでかわいらしく。ドキドキしてしまった!
そして舞台をリードしながらアップライトのピアノで小曲を立て続けに弾いていくのだけど。ミニスカートにひざ上までのストッキング。やっっぱりピアノを弾く時はこれに限る! とつくづく・・
いやそうじゃなくって(笑)、、知らない曲ばかりなのに気になる選曲で、中には教会のコラールのような感じの曲(違ったらゴメンナサイ)も混じっていたり。ミハルさんの手にかかるとクラシックでもクラシック臭のようなものが消えて新鮮に蘇る感じがあって、演奏家が弾くピアノより断然私は好きでした。またミハルさんが紹介されるフランス近代〜ポップスなどの、私のよく分からない辺りの音楽ももっと知りたくて仕方なくなり。そしてもうそんな区分けが、ひどく音楽的でないことに感じられてきました。音楽的なことわからないのにいろいろ書いてすみません。
20分くらいのステージが2回だけだったのですが、思ってた以上で。興奮しました。結局、ミハルさんのステージ、いつか必ずちゃんと観に行かなくちゃと決心したのでした。
(でもこんなイベントにもぐり込むのも面白かった。ひょっとしたらこういう場の方がおもしろいかな・・?)

○○○○○○ ○○○○○○○○〜〜〜
 <蓄音機> EMG Mark.Ⅹ(1932) & Mark.Ⅷ(1928)
そして、ステージの合間、
小さなステージの左右両脇手前に一台ずつ、ラッパ式の蓄音機が設置されている。ホーン部分が大きくて(直系70cmくらいかな・・)、前に立ってみると、思った以上に迫力が。でも本体部分の木の感じ、その存在感には、現在のオーディオ機器にはない、やさしい親しみやすさのようなものが感じられました。それにシェルマン社のオペレーターの人が、交互に一枚ずつ丁寧にSP盤をかけていくのですが。

ふしぎな気持ちで近寄って、蓄音機の正面にそっと立ってみた。すると、音がこちらへ、私(聴いている人)の方へ向けて届けられてくる感じがします。



そして・・




    はっきりとわかりました。 この音。 この音です。。
    それは私が知っている音でした。






この世界にはもうどこにもないのだと思い込んでいたあの音。あのやさしい音の届き方、あの空気の感じに迎えられたような感じで。
この時、あのイベントのフロアの片隅で、誰にも知られずに、私はしっかりと、私に音楽を聴かせてくれていた父とふたりでそこにいるのを感じることができたのです。

私の心の中、記憶の底に格納されていた大切なものが、この蓄音機の独特のやさしい音の力で初めて溶けて、そしてずっと消せなかった、大切なもの、愛するものはもう全てあの世に逝ってしまって、私は廃墟のようなこの世界にひとり取り残されているという感覚から、少しすくい上げられるような感じが。


ラジオでもSP盤の音源をかけていただいたけれど、
この音の届き方、この空気の感じ・・。 そこには本物の蓄音機を通して、その前に立って、その部屋の空間の中で直接聴いたときにだけ感じることのできる何かがあることがわかりました。
来てよかった。。   本当に・・救われたんです。

  今気がつきました。右手にあった Mark.Ⅷは、私の父と同じ歳だったんですね。 - 5/3 -